実際に扱った事例のご紹介

離婚や子どもに関する事例

離婚した前妻の子どもの成人後も扶養料の支払いを求められた事例

<相談内容>
相談者は40代の男性で、前妻との間に子どもが1人いましたが、まだ幼い頃に離婚して親権も前妻に譲り、特に養育費の支払いを求められることもなく、長期間音信不通状態でした。ところが、子どもが高校生になった頃に、突然、前妻から養育費の支払いを求める調停を申し立てられ、仕事に忙殺されていた依頼者は裁判所に何度も出頭するのが煩わしく、弁護士を代理人にするまでもなく、初回の調停期日で子どもが成人になるまで毎月の養育費の支払いを約束しました。相談者はその後、調停で合意した通りの養育費の支払いに応じていましたが、前妻との間の子どもが成人になる直前に、前妻から、子どもが大学に通っているので大学卒業まで養育費の支払いを続けて欲しいとの要望がありました。けれども、相談者はすでに再婚して新しい家庭を築いて海外に居住して勤務していたし、子どもが成人した後には養育費の支払義務はないはずだと考えてこれを断ったところ、今度は前妻との間の子ども自らが申立人となって「扶養料」の支払いを求める調停を申し立て、相談者が調停を欠席し審判手続に移行したところで相談に来られました。

<対応内容>
相談者の代理人として主張をまとめて裁判所に提出し、審判期日に出頭したところ、裁判官からは、相談者が前妻の子どもの大学進学を了承していた事実もあるから生活が苦しければ大学を退学して働けとは言えない、学生である以上成人であっても「未成熟子」として、父親には自分と同じ生活水準の生活ができるまでの扶養義務があり、その金額は原則として養育費の算定方法と同一に決める、母親はほとんど収入がないが父親の収入をもとに学費の加算等をすると、調停で請求されていた月額を上回る金額を相当と考えると告げられました。子どもが成人になれば養育費の負担はなくなると考えていた相談者は、こうした裁判官の見解に驚かれたようでしたが、前妻やその子どもに金銭の支払要求を繰り返されることにはうんざりしたようで、裁判官の意見と異なる算定方法が合理的であるとして、月額扶養料額をもっと少なくすべきであるとする意見を繰り出して争うよりも、早期の決着を望まれました。そこで、審判が言い渡されるのを避けるために調停に手続を戻した上で、将来大学院への進学や留学をするからと言って改めて学費の補助を求めるなどの請求をしないことを約束させた上で、扶養料一括払いの合意で調停を成立させました。

<弁護士からのアドバイス>
離婚に伴う子どもの養育費の定めにおいても、両親が大学卒業の学歴を有する場合には、子どもの養育費も大学卒業までとするのが一般的となっています。この事案で裁判官は、父親が前妻の子どもの大学進学を認めていた事実を重視して「未成熟子」と認定しています。親権を持たない父親としては、幼い頃に別れた前妻の子どもが年頃になってから急に連絡を取ってきた場合には、安易に大学進学を了承しないようにしないと痛い目に会うということも言えそうです。

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