実際に扱った事例のご紹介

商標権や著作権に関する相談の事例

受注執筆したテキストの著作権をめぐり、提訴後和解金の支払いを受けられた事例

<相談内容>
相談者はメーカー勤務後に独立開業して個人でコンサルタント業を営んでいましたが、セミナー企画会社に転職したメーカーの元同僚から声を掛けられ、元同僚が主催するセミナーで講師を務めることになりました。相談者は、自分が担当する講義部分のテキストを執筆して原稿を元同僚に預け、元同僚が合冊製本したセミナーテキストを印刷してセミナー参加者に配布しました。相談者は、何回かセミナー講師を務めましたが、自らの業務が多忙となったため、セミナー講師を辞めるに際し、相談者が執筆したテキストをセミナーで使う場合には、セミナー開催ごとに使用料を払うことを元同僚と合意しましたが、テキストの著作権に関しては何の合意もなされませんでした。その後、相談者は元同僚と疎遠になり、テキスト使用料の支払いも受けていなかったところ、ある時、元同僚がセミナーを継続して実施していたのに使用料の支払いがされていなかったことが判明しました。相談者は、自ら元同僚に対して未払い使用料の計算と支払いを求める請求書を送付しましたが、元同僚から誠意ある対応がないまま、代理人弁護士から受任通知が来たため、相談者も代理人を立てることを考え、相談に来られました。

<対応内容>
相談者の代理人として、先方の代理人に相談者の立場と請求の根拠についての法的見解を伝えましたが、使用料の任意の支払いに応じる姿勢が見られず、使用料の支払いや著作権侵害などを主張して提訴しました。提訴準備の過程でもさまざまな事実関係が判明し、相談者は元同僚だからと信用していたのに裏切られたとの思いを募らせ、裁判で請求する内容も次第に膨らんで行きました。争点はセミナーテキストの著作権の帰属や、テキスト改訂に伴う著作権や著作者人格権侵害など多岐にわたり、裁判も長期化しましたが、著作権は原告に帰属することを前提とする裁判官の半年にわたる粘り強い説得と交渉により、最終的には被告が原告に相当額の解決金を支払う内容で和解により裁判を終結させました。

<弁護士からのアドバイス>
著作権は著作物を創作した人に発生する権利であり、この事案のように当事者間で特段の合意がない場合には、著作物の執筆を依頼され実際に執筆をした人に著作権が発生します。会社からの指示で従業員が著作物を作成したような場合は、例外として会社自体に著作権が発生するという法律の規定がありますが、著作物の制作を外注するような場合には、原則として著作権は発注者側には帰属しません。この点の理解が十分に浸透しておらず、外注先に少額の原稿料を払ったことで著作権の譲渡を受けたつもりになっている場合がしばしばあるので、注意が必要です。

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