実際に扱った事例のご紹介

勤務先に対する請求に関する事例

パワーハラスメント被害を訴え、最終局面で和解での解決ができた事例

<相談内容>
相談者は、転職先で上司から何らの研修の機会を得られないまま仕事を割り当てられ、どのように処理をすべきかわからず困惑しながら、適当に誤った処理をすると上司から罵声を浴びせられるパワーハラスメント被害に悩まされました。そのうち、同じ上司からパワーハラスメントを受けて退職した人が過去に何人もいたことを同僚から聞かされ、人事部長にも上司のパワーハラスメントへの対応を相談したところ、会社としても当該上司を問題にしている旨のコメントを聞きました。そこで、相談者は、上司を異動させるか自分を別の部署に異動して欲しいと繰り返し申し入れましたが、勤務先は相談者の希望に応じず、勤務を継続するか退職するかの選択を迫られた相談者は、上司のパワーハラスメント被害から免れるため、やむなく退職に応じることにした後、相談に来られました。

<対応内容>
相談者は、すでに別の転職先を見つけて就職しており、就労環境の悪い元勤務先への復職は望んでいなかったため、元勤務先に対して未払い残業代の支払いを求めるとともに、元勤務先と元上司に対し、パワーハラスメント被害に対する慰謝料の支払いを求めて提訴しました。相談者は、人事部との複数回の相談中に会話内容を録音したりしていましたが、争点の判断を決定づける決定的な証拠とまでは言えず、同じ上司からパワーハラスメントを受けた元従業員の証言も得られない状況で、少額の未払い残業代の支払命令に留まる判決が下されることになりそうでした。ところが、最終口頭弁論期日直前になって、元勤務先側から相当額の和解金支払いの提示があり、和解金の支払いを受けて和解により裁判を終結させることができました。

<弁護士からのアドバイス>
職場でのパワーハラスメント被害による慰謝料請求をしたいとの相談は増えています。ただ、裁判では、勤務先側がパワーハラスメントの事実を否定して争う場合には、被害を訴える労働者側がパワーハラスメントがあった事実を証明する証拠を提出しなければ、裁判には勝つことができませんが、こうした証拠を退職後に収集するのは容易ではありません。この事案は、そもそも会社側がなすべき研修をしなかったことからパワーハラスメントが始まっていましたが、会社側が真実と異なる研修実施記録を提出するなど、会社側がパワーハラスメントの事実を徹底的に否定しました。パワーハラスメントが常態化している企業ほど、その事実を否定し隠蔽しようとする傾向がある(むしろ、隠蔽する企業風土や文化があるから、パワーハラスメントが常態化するのでしょう)ようで、この事案でも敗色濃厚ながらも、最終局面で和解金の支払提示が受けられたことは幸運だったと考えられます。

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