実際に扱った事例のご紹介

離婚や子どもに関する事例

別居中の夫に対し子どもの学費を含めた婚姻費用の請求をした事例

<相談内容>
相談者の40代の女性は、夫が妻である相談者の女性と子ども2人を残して一人で別居を始め、生活費の支払いや私立の大学と高等学校に通う2人の子どもの学費等の支払いもしなくなり、専業主婦で収入のない奥様が困って相談に見えました。

<対応内容>
奥様の代理人として別居中の夫に対して生活費等として婚姻費用の分担をするよう求める調停を申し立てました。争点は、私立学校に通う子どもたちの高額な学費について、どこまで夫側に負担してもらうことができるか、にありました。奥様は、授業料だけでなく通学定期券代や教科書代などについても負担をして欲しいと主張しましたが、話し合いはつかず、審判に移行しました。審判での裁判所の判断は、いわゆる算定表を用いて婚姻費用の分担額を計算すると、子どもたちの学費すべてを賄える金額には達しないことや、手続が続いているうちに上の子どもが20歳となり成年となったことも考慮し、上の子どもの授業料などの学費に関する負担は、夫婦間での生活費の分担を決める婚姻費用の分担の問題として扱うのは適切ではない、との判断を示し、算定表で算出される婚姻費用に含まれる上の子どもの公立学校の学費相当の金額は控除すべきであるとして、算定表で算定される婚姻費用の額からさらに減額する判断をしました。

<弁護士からのアドバイス>
この事例は、妻側から夫に対して、成年となったものの未だ学生である子どもの学費の負担を求めた事例です。父親が子どもの進学を勧めていた事情はあったものの、自営業者で収入が激減していたことにも配慮したのか、妻・母親側には厳しい結論となりました。家庭裁判所では、生活費の負担の問題は家庭の事情を考慮して案件ごと決めることになっていますが、個々の家庭の状況に応じてどのような結論になるのか予測が困難な点もあります。この事案は、家庭裁判所が使っているいわゆる「算定表」の基準が2019年12月に改訂される前の事案でしたが、この改訂によって婚姻費用額が請求者側に若干有利に変更になったものの、子どもの成人年齢は2022年4月から18歳に引き下げられ、子どもを扶養する親による子どもの学費負担の問題についての裁判所の判断が、どのように変化するのかは注視する必要があります。

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